2018年9月1日土曜日

晩夏、月山

2018年8月19日(日)晴れ(高曇り)岩根沢コース
1時50分起床。2時20分発。
登山口には4時半過ぎ着。林道終点手前300mで土砂崩れあり。車通行可。
スタート4時50分→銅山川5時10分(滞在30分)→清川小屋7時10分(滞在30分)→8時半1650m(軽食10分)→山頂10時過ぎ頃(滞在90分)→11時半スタート→下山到着15時半頃

 夏至を過ぎ、早や二か月。日の出は目に見えて遅くなっている。さすがに空は白むが、登山路はヘッデンが必要。

 朝露に濡れた草草と肌寒いくらいの気温。当たり前の夏山の早朝に清々しいスタートとなった(朝焼けを眺めながら日中の高温を心配するような今までとは違う)。


 銅山川に下る頃には周りも明るくなる。
 川の水深は20㎝くらいか、波しぶきが膝まで上がってくる冷たい川面にそろりそろりと素足を入れる。冷てえ、こんにゃろうと叫びながら、5歩を耐える。おにぎりを頬張り足を乾かす。

 清川小屋へ続く尾根道は、登り始め200mくらいが急だが、後は比較的なだらかなしっかりした道が小屋まで続く。ただ、途中、ほんのわずかだが道型が崩れている斜面があった。コース脇の1177mの三角点を探す。GPSで三角点到着も支柱は見つけられなかった。

 はじめに目についたのはツルニンジン。キキョウ科の蔓性多年草、根が朝鮮人参に似ているのでこの名に。薬効もあり、朝鮮と長野では代表的な山菜、だそうである。


 次はクロナバヒキオコシ。シソ科ヤマハッカ属の多年草、弘法太子の時代であるが病人が起き上がるほどの薬効があったのでこの名になったそうだ。次はシソ科のミヤマトウバナ。



 剣岳・点の記で柴崎が故郷の山にも沢山咲き、好きな花と言ったムシカリ(オオバカメノキ)の実。

 こちらはおそらくマルバキンレイカ(の実)と思われる。そしてタムラソウ。チョウジギギク。更にトリカブトにホツツジ。




 


 トリカブト以外は、つつましく地味な花々である。夏の盛りが過ぎた今時分に、いかにも似つかわしい感じの花々だ。
 8月後半は、季節の移ろう気配が感じられる。咲く花々の、また実を生す姿に、木々の緑の固まりと、山の姿も刻一刻と変化している。
 今年も山の都合に合わせられなかったなぁと、7月に来たかったなぁと悔しい思いが横切る。いつになったら、好きなように時間が使えるのだろう。老いも迫ってきているというのにと改めて悔しい思いが湧き上がる。あきらめるしかないのだが。

 7時10分頃小屋に着く。小屋前で軽食。小屋の管理のため一昨日から来ていると小屋番さんが声をかけてくれた。昨夜泊まった寒河江からの先行者がいることや、トビタケノが採れる話等を聞いた。

 話をしているうちに30分ほどの滞在となってしまった。

 小屋裏の灌木のトンネルを抜けるとまあるい月山がどっかりと現れる。上部には消え残る雪田。
 広い湿原にはイワショウブ、ミヤマリンドウ、キンコウカ、クロウスゴ、ニッコウキスゲ、ヒナザクラの実。それにナンブタカネアザミ(と思われる)が。







 足元には立谷沢源頭となる小川が威勢良く流れる。その辺にはオオバミゾホウズキ、フキユキノシタ。


 登山道は草原と灌木を交互に抜けていく。ヨツバシオガマ、エゾシオガマ。



 急傾斜地を抜け、山頂下の岩石帯に近づくと、ハクサンイチゲ、なんと隠れるようにイワカガミ、ウサギギク、ミヤマコゴメグサ、ヒナウスユキソウ、アオノツガザクラ。







 山頂ではハクサンシャジンの実、コガネギク(ミヤマアキノキリンソウ)、ハクサンフウロ。




 だいぶ下ってからだが、鮮やかなオレンジ色のクジャク蝶がウゴアザミ(と思うが?)に停まっている。アサギマダラがヨツバヒヨドリの周りを舞ってる。



 そして、ミヤマキタアザミ(じゃないかなぁ?)、センジュガンピ。



 2015年の7月に岩根沢から月山に上り、大雪城の後退とともに咲き乱れるヒナザクラの大群落に感激し、毎年、この時期に行こうと決心したのに、16年も昨年も行けずじまいで、今年こそはと意気込んでいたはずなのに時機を逸してしまい、今回、兎にも角にも登った。

 花々は初めから期待はしていなかったけど、意外に沢山の種類が咲いており、こうした遅い時期は遅い時期で興味深かった(そういえば、昨年、肘折から念仏が原ピストンした時もサワギキョウなどの花々に出会え、同じように感じたことを思い出した)。
 そして、高曇りの空の下に落ち着いたたたずまいの鳥海山が綺麗だった。眼下一望に収まる庄内を初めて見た(気が付いた)。

 銅山川(サカサ沢)源頭をぐるりと囲む稜線を行く岩根沢コースの、緑のまばゆさが美しかった。ブナ林の木陰が快かった。耳元で逃げもせず大音量で鳴くセミのふてぶてしさに命を考えた。足元をそろりと横切るマムシはこちらに気が付いていないだろうと楽しくなった(ビックとした後に、悠然たる蛇の様子から)。



 色んなことを考えていたけど、最後は早く車に着かないかと、そればかり考えていた。

 やっぱり大したことないなぁ。

2018年8月17日金曜日

堪能指数1.4倍

 2018年7月30日快晴酷暑の鳥海山康新道

小関君と鳥海山へ。午前2時半発。


 彼からのリクエストで康新道を行く。遊佐山岳会の方から康新道にはチョウカイフスマの大群落があると教えられたという。
 康新道は、もう10年も前に下ったことはあった。クロクモソウやアラシグサとかを鈴木さんに教えられた覚えがある。

 竜が原湿原にはギボウシだけ。ミツガシワもヒオウギアヤメもミズギクも見当たらない。
 祓川神社からすぐの登山道の入り口は、なぜか進入禁止にされていて、比較的急な雪渓がコースとなっている。スプーンカットは小さく、またこの時間帯だと雪面は締まっており、歩きにくかった。賽の河原の手前、御田の手前にも急な雪渓が残っており、軽アイゼンが、4本爪でいいので、欲しいと思った。
 この時期に、この雪渓を何度も歩いているが、アイゼンが欲しいと思ったのは初めてだった。雨が少なく、気温が高い日が続いていたので、いつもと雪渓の溶け方が違い、スプーンカットが小さく、足場が心もとなかったせいだと思いつつ、還暦を迎え対応力が落ちてしまったのかとの思いも横切り、足取りは重く、慎重になるばかりだった。

 御田のチングルマ、ヒナザクラが見事だ。



 七ツ釜手前の雪渓の前半を登り切ろうとしているところで、後続の女性リーダ4人パーティーに追いつかれる。こちらは慎重かつ自信を失った危なっかしい足取りだったので、先を譲ったが遠慮されてしまった。仕方がないのでノッタリと先を進む。
 小関君が腹がすいたというので軽食タイムとする。後続の4人パーティーは、その手間で休憩したらしく、しばらくたってから追いついて来て、2人は雪渓を、2人は現れた登山路を行く。ほどなく、雪渓が終わったところで4人は合流するも、立ち止まり何かを探しているようだった。
 こちらも再び歩き出し、4人パーティーが立ち止まっている手前で、登山路に残る雪を踏み抜いた奥にサングラスが落ちているのを見つけ、ほぼ奇跡的ですねと手渡す。ゴミにならなくて良かった。

 七ツ釜を過ぎると康新道の分岐。康新道は七高山にまっすぐ続く稜線を行く。西側が切れ落ち、山頂、外輪、稲倉岳、鳥海山北斜面そして日本海と、雄大な光景が広がる素晴らしいコースだが、あまり歩く人は多くないようだ。
 このコースの草原部ではハクサンシャジンやイワテトウキが、そしてガレ場にはチョウカイフスマ、イワブクロが大きな群落をなす。大岩にはイワウメがびっしり抱きついてもいる。その時季に来れば、また違った花々が迎えてくれるのだろう。
遠くのシルエットは寒風山か

イワテトウキと思う

チョウカイフスマの群落

イワブクロの群落

ハクサンシャジンとアキノキリンソウ

稲倉岳

 新山を回って大物忌神社前で大休止としたが、この日は快晴猛暑で、あまり食欲がわかない。早煮えマカロニをパスタソースで流し込む。

 大休止から腰を上げたところで、先ほどの女性リーダー4人パーティーとすれ違い、あいさつを交わす。
 下山は大雪路を行く。午後から雲が出始め、日差しを遮るものの、高山とは思えない高温高湿度に話す余裕もなくなり、写真撮影に忙しい小関君を待たずに、ひたすら下り、水場ではしびれるように冷たい雪解け水で口を漱ぎ顔を洗う。
 朝、てこずった雪渓も緩み、快調に下る。
 御田の下の雪渓で70代近い老夫婦が下山にてこずっている。旦那さんは声をかけられたのがちょっと不満気味に、シューズのかかとが丸まったタイプで靴をねじ込めないと言う。奥さんのほうは普通のウォーキングシューズに見える。旦那さんは尻もちをつきながら自力で降りて行ったが、奥さんは先に進めなくなってしまっていた。靴でステップを切るのでその後を追ってくださいと誘導する。最近、鳥海山や月山での事故報道が多いように感じるが、中身は高齢者ドライバー事故と同じで、経験による自己過信による事故なのかもしれないと思いながら、その先の雪渓でも、急なところは靴を雪渓にねじこみ、意識して靴跡を付けて進んだ。

 そういえば、途中一緒になった人に、前日行われた鳥海ヒルクライムレースで、60代部門の総合2位の男性がいた。小関君の話によれば(小関君が落としたサングラスを拾ってもらった縁)、名古屋の人、タイムトライアルで1位、ヒルクライムで2位だそうだ。山歩きも、奥さんと2人して快速であり、レースの翌日凄いですねと驚いたら、28Kmと距離が短いからダメージはないとあっさり言われてしまう。

 朝の5時から十二分に楽しんだ鳥海山滞在は11時間弱。コースタイム1.4倍くらいの堪能係数。コースタイムより如何に早く歩けるかから、如何に山に居座っていられるか、これだな。